たとえ話二つ










1)

あなたは崖から

命綱一本でぶら下がっています。

怖いので下は見ません。

必死で綱にしがみついていますが、

手は痛くなるし、

綱もだんだんほどけて来ます。

綱が切れるか手がしびれるかして、

あなたは下に落ちます。

1メートル下にはふわふわのお花畑があり、

良い匂いの花がたくさん咲いています。

あなたはもちろん無事です。

 

崖を見上げ、

今までなぜあんなところにぶら下がって

怖い思いをしていたのだろうと思います。

 

 

2)

あなたは迷子の渡り鳥です。

家鴨の群れに交じって暮らしているうちに、

渡り鳥であることを忘れてしまいました。

良く太った艶の良い家鴨に比べ、

あなたは小さく、みすぼらしく見えるため、

家鴨たちにつつかれていじめられます。

 

ところが季節が変わると、

わけのわからない憧れが芽生えます。

家鴨たちに嘲笑にされながら、

崖から空をめがけて羽ばたきます。

すると、大空へするすると

舞い上がるではありませんか!

目の前には空と雲しかなく、

一瞬のうちにこれまでのことは

忘れ去っています。